社会にイイね!を、社会からイイね!を、ささき歯科医院です。
今日は患者さんの許可を頂戴した上で、実際の私のインプラント治療の考え方を投稿しようと思います。
パノラマレントゲン写真です。
右と左が逆に撮影されるので、画像の右が、患者さんの言う左、画像の左が、患者さんの言う右、になります。
60代の患者さんで、
①左下が痛い(画像右下)
②右上にインプラント治療を考えている(画像左上)
という方がいらっしゃいました。前の医院で治療中で、インプラント治療に関してセカンドオピニオンを求めて来院されました。
前医では、「右上のインプラント治療においては、骨が薄く、骨を足すオペをしないといけない、大がかりになる」と言われたそうでした。初めてなのでよくわからず、またその担当の先生のインプラント治療の経験があまりない、とのことから、人づてにささき歯科医院へいらしていただいたという経緯です。
さて、実際に私が患者さんに伝えたことは、、、
・骨を足すのはそこまで難しい話ではない、心配はいらない。
・しかし、インプラント治療は1本では終わらない、最低でも2本は必要。
・将来的にもう3本必要、つまり最高で5本必要になる可能性が高い。
・治療費用もかかるし、そこまで覚悟した上で今回右上のインプラント治療を行うなら構わないが、そこまでと思っていないならインプラント治療は辞めたほうがいい。
という内容でした。
●右上1本だけの話じゃないの??
●なんで5本もいるの??今歯がないのは右上だけなのに??
解説していきます。
①まずは1本1本の歯の状態を考えます。
全ての歯の条件は当然等しいことはまず無く、1本1本の歯の状態に差があります。
今回で言うと
:青の丸をつけた歯はおそらく最後まで残ると予想される歯
:黄の四角をつけた歯はいつか何かしらのトラブルが起こるだろうと予想される歯
:赤の星をつけた歯は現時点でいつ症状が出てもおかしくない、もしくは寿命が短いと予想される歯
となります。
②次に噛み合わせを考えます。
レントゲンから前歯が噛んでいない、開咬状態だということがわかります。アンテリアオープンバイトと言われる状態です。
噛み合わせの話は非常に難解で、流派によっても意見が変わるため詳細は割愛しますが、開咬は奥歯に非常に不利で、天然の自分の歯ならまだしも、人工物が入ると奥歯が悪くなりやすい状態です。
今回の場合第2大臼歯までを補うのではなく、第1大臼歯までを補う範囲とします。
③年齢を考えます。
今回は60代の方でした。
日本人の平均余命から言っても、まだあと20年から30年の期間があります。
しかし70代、80代になってから積極的に歯科治療ができるかと言われるとそうではなく、なるべく60代のうちに全ての歯科治療を終わらせ、あとはメンテナンスのみで歯科に通うというのが理想的です。
すなわち治療介入としてはあと10年以内が目処になります。70代後半以降に積極的に歯科治療を行えるかどうかは、全身状態などもありかなり不透明になります。
★これらを踏まえると
(ここから、画像の右、左をそのまま右、左と表記します。非常にややこしいですが、左上、と書いてあったら、画像の左上を想像していただいたら構いません)
⁂左上
向かって左上のインプラント治療は、第1大臼歯までを補うという意味合いから必要だと考えます。
左上のインプラントの歯は、左下の奥から2番目の青い丸の歯と噛むことになります。
⁂左下
左下の赤い星の歯は、第2大臼歯であること、また噛む歯がないため、抜歯することになります。
⁂右下
一番右下の赤い星の歯(第2大臼歯)は、骨がないことから抜歯することになります。
右下の右から2番目の赤い星の歯(第1大臼歯)は、今治療して仮に治ったとしても10年後、20年後にちゃんと歯として成立している確率は低いこと、また10年後には70代になっていて、70代になってから再治療になるのはおそらく難しい、という判断から抜歯することになります。
第1大臼歯は咀嚼にも重要な歯なので補うことを考えないといけません、この部位にはインプラント治療が必要でしょう。
⁂右上
右上の赤い星の歯(第2大臼歯)は、骨がないこと、根尖病変が小さくはないこと、虫歯があること、噛み合わせが不利なこと、噛む歯がないことから、抜歯判断になります。
つまり、治療開始時点で4本の抜歯、2本のインプラント治療が必要です。
4本も抜くの・・・?と思われる方が多いでしょう。もちろん歯は多いことにこしたことはありません、しかし年齢や治療介入のタイミング、噛み合わせ、今後の人生でトラブルが少ないように、ということを考え合わせると、今回は第2大臼歯を積極的に補うことはしないほうが得策だと判断します。
(もしこの方が40代だったら少し話は変わってきます、歯を残す方向で考えるでしょう。)
さらに、黄色の四角の歯は今後30年もつかどうかわからない歯です。
神経の無い歯はすべからく何かトラブルを起こす可能性が低くはありません。
様々なトラブルが60代で起これば(起こって欲しくありませんが)通院が可能ですが、もし80代で起きると、、、80代になって、抜歯し、そこから何か治療を行う、というのが現実的でしょうか?私はそうは思いません、単純に治療に対する体力やガッツ・気合があるかどうか怪しいと考えます。
黄色の歯が最後までもってくれたらいいけれど、もしかしたら、
最終的にインプラント治療が5本必要になる可能性があるわけです。
ここまでをわかった上で、
もう一度レントゲンを見て、果たしてインプラント治療をどう考えるか、は最終的には患者さんがお決めになることです。
全ての説明をお聞きになられてご理解いただいた上で、
「例え将来他の歯が悪くなってもその時考える、今はかめないところがかめるようになればいい。」
と考え、歯がないところにインプラント治療をするのは良いでしょう。
しかし、上記の内容を歯科医師から知らされず、あとになって歯が悪くなって、『またここにもインプラントが必要ですね』と言われた時に、「えっ、、、あの時のインプラント治療だけで終わりじゃないの・・・?」となってしまうと、少し悲しいですよね。
ささき歯科医院では、その場限りの治療ではなく、生涯に渡って歯に対して、そして歯科に対して良好な状態を保てるように治療を提案します。
特にインプラント治療は高額で、やり直しの効かないものです。
医院選びでお悩みの方は、治療方針が医院によって違うこともご経験なさったことがあるでしょう。
いざインプラント治療を行う前に、カウンセリングをお受けになられることをお勧めします。
今回の患者さんは結局、
『インプラント治療を1本だけやれば噛めると思っていた、今後の人生のことまで聞いていなかった、話を聞けてとても助かった』
『そんなに高額な治療費用がかかるなら保険の範囲で構わない』
とおっしゃられ、保険の部分義歯を作ることになりました。保険治療だからといって私の姿勢は何も変わりません、しっかり治療をさせていただきます。
上記の相談内容
1回目来院 資料取り(レントゲンや歯型など) 1時間
2回目来院 カウンセリング(歯科医師との会話のみ、治療は行わず、治療方針の説明・共有にのみ時間を使います)1時間
合計10,000円程度